信じるという「力」episode2
京都に戻り、いつもと変わらない日常の生活が始まります。
たった一つ、はらボーの病魔の進行を除いて
は…。
普段のはらボーはとても明るくて優しく、
人見知りもしない為、みんなから愛される
キャラ。
芯はしっかりしていて、見た目からは想像はつかないですが、男勝りで弱音など吐かない前向きな性格でした。
ある日真夜中に電話が鳴ります。
「もしもし」
「……。」
「もしもし?」
「……。」
「はらボーか?どうした?」
「……。」
「大丈夫か?」
「頭の中で象が暴れてる…。」
腫瘍が脳のあちこちの神経を圧迫して、頭が割れるような痛みがはらボーを襲うようになって
きたのです。
「寝たら明日、起きられないような気がする」
普段のはらボーならまずそんな事人には言わない子です。そんなはらボーが今、弱々しい声で不安を口にしているのです…。
「大丈夫や、はらボー。寝られるまで電話
切らずに待っとくから…。」
そうは言っても、何と言っていいかわからず
ただただ、
「大丈夫、はらボー。大丈夫、はらボーやで
・・・」
といつもと同じ言葉を繰り返す私。
本来なら、側に居てあげるのが良いのでしょうが、当時僕には彼女がいました。
彼女には、はらボーの病気の事全てを話し、残り少ないはらボーの時間、出来る限り力になってあげたいと話し、理解してもらいました…。
というよりは今考えてみると我慢してもらっていたのだと思います。
というのも、episode1で触れましたが、はらボーとは僕にも理屈では説明出来ない身内のような感覚があり、その距離感は彼女からすると、とても複雑な思いはあったと思いますので…。
今でも彼女の精一杯の優しさには感謝しています。
暫くすると電話の向こうからはらボーの返答が無くなります。
「はらボー、大丈夫か?はらボー!」
「スー…。スー…。zzz…。」
「・・・。」
どうやら…安心して寝ることが出来たようです。
はらボーが無事寝られた事を確認すると
何故だか涙が溢れてきました。
「なんで、なんで…。神様はなんでこんないい
やつにこんな辛い思いさせるんや?
なんでや!なんでや!なんでや…。」
怒りというよりやるせなさ、自分の無力さを
思い知らされました。
それまでの僕はどちらかというと、唯物論者。
神頼みなどはほとんどしない類の人間。
そんな僕がその時初めてと言ってもいいかもしれません。心から神様にお願いしたのは…。
「神様どうかはらボーを助けてあげてくだ
さい。もし僕の命分けれるのなら、少し
でもはらボーに分けてあげてください。
お願いですから、はらボーをもう少し生き
させてあげてください。」
そんなお願いをしたのは後にも先にもこの時だけです。というより、その時の僕にはそれくらいのことしか出来なかった…。というのが正しいのかもしれません。
ただ、ちっぽけな僕の願いは虚しく、はらボーの病状はさらにはらボーを苦しめることになります…。
episode3へ続く・・・